【バッテリー発火事故多発】ヒュンダイ EV8.2万台 世界で歴史至上最大級のリコール

日本車の電気自動車元年と呼ばれる2021年。日本でも道中でEV自動車が走っているのをよく見かけるようになりました。
私も今年の夏、車検があるので、車の買い替えを検討していますが、PHEV(プラグインハイブリット自動車)にするか、EV(電気自動車)にするか、それとも思い切って、FCV(燃料電池自動車)であるMIRAIにするか、いろいろ悩んでいるところです。
(まあ、現実的にはヤリスやノートのようなコンパクトカーに落ち着くのかなと思いますが。)

補助金も出る今のうちにEVを検討されている方も多いと思います。ただ、EVはEVならではの問題点もあります。そのひとつがバッテリーの発火事故です。

EVの生命線ともいえるバッテリーですが、その発火事故が相次いで報告されています。そして先日、ヒュンダイは「コナ」などのEV8.2万台をリコールすると発表しました。これは、歴史至上最大級で最悪といえるバッテリー関係のリコールとなってしまいました。

さらに、同社の車を運転していた有名スポーツ選手の事故も発生し、今、何かと話題になっています。今回は、ヒュンダイとはどんなメーカーなのか、それらの事故と絡めて考えていきます。さらに、EV、PHEV市場で遅れをとっていると言われている日本メーカーの現状と今後についても考察します。

タイガーウッズ、スポンサー企業の車で事故、原因は?

「タイガーの命を救った車」
韓国の自動車メーカー、ヒュンダイの高級車「ジェネシスGV80」がそんな風に注目されています。

タイガーウッズが自ら運転する車で事故を起こし、救急車で搬送されるという事故が発生。
単独車両の転倒事故であり、車両は大きく損壊し、運転していたウッズは足首の複雑骨折のほか、脚の2ヶ所の骨が折れ、そのうち1ヶ所は複雑骨折だったそうです。

車両の前面は大破して原形をとどめないほど大破していたにも関わらず車内の損傷はほぼなかったこと、両足の骨折以外には頭や胸を負傷していないことに注目されており、米国でのセールスに苦戦するジェネシスによって思わぬ宣言効果になった。

こんな記事がネット上にありました。誰が言っているのかわかりませんが、十分過ぎる程の大けがであり、大型SUVでここまでの大けがを負うのも疑問が残ります。当初、スピードの出し過ぎなどの無謀運転の疑いがあるという報道もありましたが、最新の報道ではその疑いはないということでした。車に欠陥があったという見方も出て来ています。タイガーウッズのスポンサー企業であるヒュンダイの車で事故を起こしてしまったという皮肉なカタチとなりましたが、このような悲惨な事故が起こらないように、第三者が冷静に分析して、原因究明に努めてほしいところです。
2019年に劇的な復活を遂げたタイガーウッズですが、2021年出場予定のツアーは絶望的になりました。選手生命も危ういという声もあり、もう一度復活してまた活躍してほしいです。

歴史至上最大級で最悪 ヒュンダイ EV8.2万台を世界でリコール

世界で5番目の自動車メーカーであるヒュンダイ。EVでは、傘下メーカーから2車種、ヒュンダイ自身からも2車種発売しており、そのひとつであるコナに関しては、電費性能(1kWhの消費電力量で走れる走行距離)において定評がありました。
しかし、以前からバッテリー関係の発火事件が発生しており、様々な方面から安全性についての疑問の声があがり、昨年に、一度、リコール対応を行っています。その際は、バッテリマネージメントシステムのソフトウェアをアップデートする対応を取ったようですが、それにも関わらず、リコール対応後のコナでまた発火案件が発生し、再度、リコールになってしまいました。

EVより内燃機関車(ガソリン車)の方が発火案件は多く、必要以上に大きく取り上げる必要はないという声もありますが、今回のリコールの最大の問題は、前回のリコール対応後、発火案件はもう発生しない、問題を解決したと主張しているにも関わらず発火したという点です。論点がずれており、EVだろうが、内燃機関車であろうが、本来は一発アウトな事案です。

リコールの内容は、バッテリーパックをすべて交換するというものですが、昨今のEV市場の急速な拡大により、バッテリー生産は追いついておらず、その中で8.2万台ものリコールを完了させるにはかなりの時間と費用を要すると推測されます。

同社はバッテリパックを交換するまでは、満充電状態で放置しないようにアナウンスしています。バッテリーマネージメントシステムが悪いのか、バッテリー自体の問題なのか、未だに原因ははっきりしていないようで、ともに韓国企業である、ヒュンダイと搭載バッテリーを開発したLGエネルギーソリューションがリコール費用の分担についてもめているそうです。言葉通り、「罪のなすり合い」です。

また、同じLGのバッテリーを搭載したGMのEVでも発火案件が発生しており、その因果関係についても注目が集まっています。(EVとは関係ないですが、そういえば、韓国製のスマホも燃えてましたね。)

長期販売でEV発火事件がないのは日産リーフだけ

このヒュンダイの発火事件は、EV業界全体悪い前例ができてしまったと言えます。こういう事件があるとまだまだ完全電気自動車は早いとか怖いというイメージがつきまといます。

長期販売でEV発火事件がないのは日産リーフだけです。もちろん、人間が造るものなので、根本的に0にすることは事実上不可能ですが、それでも安全性をギリギリまで高めること、そして事故が起きてしまった後の迅速で、かつ、オーナーを納得させる対応が求められることは言うまでもありません。
EV車は世界で価格競争が激化しており、重視される性能は航続距離や充電スピードで、安全性は目先の商品力にならないかもしれません。しかし、そこを妥協せずに愚直にコストと戦っている日産のようなメーカーは応援したいですね。

日本のEV市場の現状と今後について

自動車大国である日本ですが、ことEVにおいては世界で出遅れていると散々言われています。ただ、内燃機関やハイブリットの性能で日本に勝てないメーカーがEVにはしり、十分な安全性を確保できないまま市場に出し、墓穴を掘っているとの見方もあります。

2020年、トヨタは5年ぶりに世界販売台数世界第1位の座に返り咲きました。カローラシリーズ、RAV4、ヤリスシリーズ、レクサスと高級車から量販車まで販売台数を着実に伸ばしました。しかし、EV、PHEVの販売台数ランキングを見ると、トヨタ含む日本勢はベスト10圏外となってしまっています。

順位メーカー名拠点国販売台数前年順位
1テスラアメリカ3527921
2フォルクスワーゲンドイツ1382906
3BYD(比亜迪)中国1262432
4BMWドイツ1169635
5メルセデス・ベンツドイツ8962425
6SGMW(上汽通用五菱汽車)中国85692
7ルノーフランス8310113
8ボルボスウェーデン8015916
9アウディドイツ7943021
10ヒュンダイ(現代)韓国729699
14日産日本471107
16トヨタ日本3820010
メーカー別プラグイン車(EV、PHEV)販売台数ランキング(2020年1月~10月)

昨年はトップ10入りしていた日産、トヨタですが、欧州勢に押し出され、圏外に沈んでしまっています。車種別世界販売台数ランキングでは、日産リーフが6位(前年3位)と孤軍奮闘している結果となっています。

欧州をはじめ、世界の自動車メーカーの多くが、EV自動車を中心にしたプラグイン車を主軸とし、さらに今後も意欲的に発売すると表明しており、ガソリン車が終わろうとしている今、EV、PHEV販売台数ランキングがそのまま自動車メーカーの実力ということに近い将来なるでしょう。

そんな中、今年2021年、ついにトヨタがEV市場に本格参入します。2021年中にEVを2台、PHEVを1台の計3台の新型電動化モデルを発売すると発表されました。さらに、EVの大本命と言われる全固体電池の開発も順調に進んでいるようです。

全固体電池とは

EVの核と言えるのがバッテリー、つまり電池です。現在はリチウムイオン電池が主体ですが、リチウムイオン電池は発火すると爆発レベルで燃え上がるため、非常に危険です。そのリチウムイオン電池に変わるのが、全固体電池です。安全性が高く、小型化が可能なのでガソリン車と同等の航続距離が期待でき、EVの大本命と言われている電池です。

リチウムイオン電池VS全固体電池
すでにエネルギー密度の限界付近。航続距離が短い容量エネルギー密度が現状の3倍。航続距離が長い
大きい。冷却機構やセパレーターが必要大きさ小さい。冷却機構などが不要
長い。急速充電でも満タンに30分以上充電時間短い。急速充電なら10分程
液体の電解質は劣化しやすく電池寿命は短い耐久性固体の電解質は劣化しにくく電池寿命が長い
高止まり。電極や電解質の材料が限られるコスト低減余地大きい。材料の選択肢が多い

日本のメーカーは全固体電池の開発にいち早く取り組んでおり、特許数は抜きん出て多くなっています。全固体電池を採用したEVがどのメーカーからいち早く発表されるか、これにより、EV市場のシェアも大きく揺れ動くのは間違いないでしょう。

まとめ

日本の自動車メーカーはEV、PHEV市場で世界に遅れていると言われていますが、まだ問題を含んでいる状態であることが浮き彫りになってきており、本当の意味で遅れているとは言えないように思えてきます。安全性が十分でないのであれば、販売台数が少ないうちは良いですが、増えてくれば、事故が増えるのは必然です。

昨年あたりから欧州ではEVより補助金の増額がないハイブリット車の方が販売シェアを伸ばしていると言います。また、2021年の欧州CO2排出量規制をおおむねクリアできるのは、まだEVやPHEVに本格参入していないトヨタだけの様相です。ハイブリット車の燃費の良さは、乗ってる人ならよくわかると思います。EVは今ひとつのブームと言えますが、そのブームが去りはじめてきており、ハイブリット車に回帰しているという見方も間違いではないようです。ここ数年、他業種だったメーカーがEV市場に参入し、短期間で一気にシェアを獲得するなど、内燃機関車からEVへのシフトが早すぎた感があからさまに漂ってました。ただ、浮き彫りになった問題が解決し、バッテリー供給が需要に追い付けば、やはり次はEVが主流になるのだと思います。