格安スマホの普及でIP電話は今後どうなる?!

スマホの普及に伴い、固定電話の契約数が激減しているようです。私の家も固定電話はもう引いていません。スマホで十分ですから。
電話の利用形態が世帯単位から個人単位へとシフトしているといったところでしょうか。

携帯電話の人口普及率を見ると、2019年時点で145.4%と、100%を超えており、1人複数台所有しているということになります。また、2020年末から始まっている各社スマホ料金の値下げにより、更にスマホを持ちやすくなっているため、100%を超えている状況下でも、この数字はもっと上がっていくように思えます。

対して、固定電話への契約数は、年々減少の一途をたどっており、その勢いが収まりそうにない状況のようです。
この状況にNTTは、採算が合わないということで、2017年10月17日、固定電話のIP網への切り替えを2024年1月より開始すると発表しました。

NTT固定電話網(PSTN)の維持にお金がかかるため、その役割をIP網へ移行してしまい、コストを減らそうという思惑ですね。
固定電話網の需要は減る一方で、IP網の需要はますます高まっているので、コスト面および通信インフラの品質の面から一緒にしてしまった方が良いということでしょう。これも時代の流れですね。

ただ、その一方でIP電話の利用者は増えているようです。

IP電話とは

まずはIP電話についてのおさらいから始めます。
IP電話は、IP、つまり、インターネットプロトコルを利用した電話サービスのことで、インターネットに接続して音声を届ける通話方法です。
NTTの「ひかり電話」などの電話番号が割り当てられるタイプと「LINE」「Skype」「Facebookメッセンジャー」など電話番号が割り当てられないタイプ(電話番号不要型)の2種類があります。

IP電話の最大のメリットは「料金の安さ」です。基本料金、通話料が一般の電話回線と比較して格段に安く設定されています。さらに「LINE」などの電話番号不要型であれば、一般電話とは通話ができないというデメリットはあるものの、基本的に通話料は無料となります。

IP電話と光電話の違い

インターネット回線を利用したのがIP電話ですが、いつしか「光電話」とも呼ばれるようになりました。では、IP電話と光電話の違いは何なのでしょうか。

IP電話も光電話も、「インターネット回線を利用した電話」という点では同じです。また、両方とも固定電話で必要な電話加入権も必要ありません。

両者の違いは使用する回線の種類です。

  • IP電話は「ADSLインターネット回線」
  • 光電話は「光回線」

ただ、光電話もインターネットプロトコルを使用した電話サービスであることに変わりないため、光電話を「IP電話」と呼んでも間違いではありません。実際、光電話のことをIP電話と呼んでいる人も多いので、混同しないように注意しましょう。

2024年からは固定電話は光電話が主流に

固定電話の利用者数は減少してますが、IP電話(光電話)への加入は増えています。直近のデータでは全固定電話のうち66%をIP電話が占めており、家に据え置く電話は「IP電話」が主流になっていくのは間違いないようです。

また、IP電話についても、NTT固定電話網(PSTN)のIP網への移行に伴い、ADSLが終了となり、その影響を受けます。ADSLは現在、NTTとソフトバンクの2社が提供していますが、前者は2023年1月末、後者は2024年3月末で終了となるそうです。そのため、ADSLを使用したIP電話を利用している場合、継続するには、光電話に移行する必要があります。

今の光電話は緊急通報やFAXも使用でき、かつ、これまでの固定電話と同じ番号が使えます。
固定電話の需要は確かに減っていますが、完全になくなってしまっては困るものです。例えば、公衆電話は、震災などの有事の際に必要なインフラですし、市外局番から始まる固定電話の電話番号を持つことは、それだけで何かと信頼を得ることができます。

例え需要は減ったとしても、固定電話が今後も引き続き、使われることは間違いないでしょう。そのかたちが光電話に変わっていくということですね。

PSTN廃止による影響

NTT固定電話網(PSTN)がなくなることで、「加入電話」と「INSネット」(ISDN)のサービスがそのままでは利用できなくなり、影響を受けます。ただし、加入電話については、IP網へ切り替わるだけなので、同じサービスを継続して利用することができます。一方、ISDNのサービスは完全に終了することになりました。技術的には、加入電話と同じようにIP網へ切り替えれば、サービス継続可能だったと思いますが、NTTは「フレッツISDN」を終了すると発表しました。

固定電話網のIP網移行は基本的に電話局内で作業が完了するため、一般的な家庭の電話機などはそのまま使用でき、我々、利用者からしたら何も変化はありません。

ただ、ISDNの終了は違い、その影響はかなり大きいです。今さらISDN回線なんて使ってないよと思われるかもしれませんが、実は今でも現役で使われるところでは重宝されて使われています。

ISDNは最大64kbpsもしくは2回線使用で128kbpsと速度は遅いですが、規定値そのままの速度が出てくれる上、遠距離などの条件でも速度が変化することがほぼないため、速度は遅くても確実に安定したデータのやり取りを行いたいビジネスユーザーから未だに支持され続けているんですね。

例えば、POSシステムやクレジットカード決済時に使用するCAT端末などはISDNを使ってセンターサーバーとやり取りしています。それらのシステムを別の通信手段に切り替えないといけないので、影響はかなり大きいと言えそうです。

まとめ

NTTによる固定電話網のIP網移行は、家庭向け通信サービスにはほとんど直接的な影響はありませんが、ISDNがなくなることで上記のようなビジネス向けの通信サービスには大きな影響を与えるということです。

あと、ADSLも終了となります。ISDNもADSLも、Wi-FiやLTEが登場する前の時代に大活躍していたインターネット接続方法ですが、ついに終わってしまうときが来たようです。ひと昔前、実家の回線をADSLに変えたときは、速度が速くなってものすごく喜んでいたのですが、あの頃が懐かしいです。